こういった疑問に答えます。
現在全国において、どのくらい不登校状態にある子どもがいると思いますか?
文部科学省のデータによると、令和元年度には小中学生合計で約18万人、そして高校生で約5万人もの不登校児童生徒がいます。
参考:文部科学省ホームページ 令和元年度度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 R01児童生徒の問題行動等調査結果公表資料 (mext.go.jp)
また、文部科学省では不登校の定義を、
「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」
と定めています。
そしてさらに、この定義に含まれない、不登校ぎみの子どもが全国にはたくさん存在すると言われています。
先ほどご紹介した数字を多いと思うか少ないと思うかは人それぞれです。
しかし、現代において、不登校になることは決してめずらしくはないと言えます。
不登校は甘えじゃない
不登校の原因は、単なる“甘え”と言えるのでしょうか?
とりわけ、子どもの祖父母世代などは、不登校に対して良くないイメージを持っているかもしれませんね。
例えば、不登校の子どもに対しては、「なまけている」と思います。また、不登校の子どもの親に対しては、「甘やかしている」と感じたりします。
もちろん、中には子どもが一時的にわがままを言っているだけの場合もあります。
そのような場合は、子どもに対して強めに登校を促すと、不登校が解消されることもあるでしょう。
しかし、そこで重要なのは、子どもの本心や状態をしっかりと把握していること。
今、子どもが背中を押してほしい状態なのか、またはそうではないのかを見定める目が必要になります。
現状として不登校になってしまっている子どもに対して、単なる“甘え”であると断定することは、いささか早計すぎると言えます。
不登校は甘えだと叱ってはいけない理由
不登校が“甘え”であると簡単に判断して叱ってはいけない理由として、以下の複数の点が可能性として挙げられます。
①ストレスに弱い面があるから
幼い時から親の愛情をしっかり受け、それを感じることができている子どもは、ストレスに強い特徴があります。
言い換えると、愛情をしっかり受けて育った子どもは、心のエネルギーが充足していると言えます。
逆に心のエネルギーが不足していると、学校における集団生活や規則に大きなストレスを感じる場合があります。
ストレスが大きすぎて、不登校に繋がってしまう子どもが少なからずいます。
②病気である
身体の病気だけでなく、心の病気を発症していることもあります。
子どもでも、うつ病や不安障害になることがあるためです。
③発達障害がある
不登校の子どもの中には、発達障害の可能性がある人もいます。発達障害として代表的なものは、
- 高機能自閉症
- 学習障害(LD)
- 注意欠陥/多動性障害(ADHD)
などが挙げられます。
他には、軽度の知的障害がある場合もあります。
※病気や発達障害の疑いがある時は、親や周囲の人だけで決めつけずに必ず医師や専門家の意見を聞いてから判断するようにして下さい。
以上で、不登校が“甘え”であると簡単に判断して叱ってはいけない理由を大まかに、3つほどご紹介しました。
他にも簡単に叱ってはいけない理由はたくさん存在します。また、複数の理由が重なって不登校になってしまう場合もあります。
つまり、ケース・バイ・ケースで、子どもに向き合う必要があると言えます。
不登校でも勉強や卒業は大丈夫?
不登校中の勉強の遅れについて、とても心配する方が多いかもしれませんね。
ただし、まず一番大切なことは、子どもの心と身体のエネルギーを補充してあげることです。
心身が充実していなければ勉強どころではありません。
そして、子どものエネルギーが十分に満たされた後、ひきこもりや不登校の生徒を専門的に扱っている家庭教師や塾などに教育・学習を依頼することもオススメです。
その他にも、不登校の生徒が通っているフリースクールなどが存在します。
また近年では、ICT(コンピューターヤインターネット、遠隔教育システム)、郵送、FAXなどを活用した学習活動も、出席扱いにできる場合があります。
オンライン学習などに興味がある人は、一度検討してみると良いかもしれません。
ただしお金がかかる場合も多いので、子どもの気持ちがしっかり充実してから、子ども本人とじっくりと話し合って決めると良いですね。
今ではオンラインで負担が少なく受けられる家庭教師サービスもあります。
無料なのでお子さんに合うかとりあえず試してみるといいでしょう。
また、「不登校でも卒業することは可能なのか?」と心配される方もいらっしゃることでしょう。
結論から言えば、小中学生であるならば、留年や退学は基本的にはありません。
また、出席日数も卒業には関係がないため、不登校でも小・中学校の卒業は可能と言えます。
※私立学校については、対応がそれぞれ違う場合があります。学校の先生や進学担当者にご相談下さい。
ただし、高校では、卒業に必要な単位を取得するために一定の出席日数が必要となります。
つまり、出席日数が足りなければ、卒業することができません。
しかし、万が一卒業できなかったとしても、本人にやる気があれば通信制高校や定時制高校へ通うことが可能です。
また、高卒認定試験を受けて合格すれば、高卒の認定を受けることもできます。
不登校の子供のために親ができること
子どもが不登校になる原因の一つとして、心身のエネルギーが枯渇してしまう点が挙げられました。
特に心のエネルギーが不足していると、集団生活や勉強についていけなくなる場合が多いです。
そのため、まずは子どもに愛情を注いであげて下さい。
食事を作ってあげたり、一緒に会話をしながら食事をするのも良いでしょう。また、やりすぎない程度のスキンシップも愛情表現の一つとしてオススメ。
休日の日などに子どもと一緒にお出かけをするのも、あまり外出をしない不登校の子どもの気分転換に良いでしょう。
いくつか例を出しましたが、共通しているのは“ともに”何かをすることです。
愛情がこもっていれば、会話をするだけでも子どものエネルギーは充電されて行くはずです。
学校に行かせること、勉強をさせることは、子どもの心のエネルギーが十分に充電されてからにしましょう。
少なくとも、段階的に学校へ行ければ、それはすごいことだと言えます。
また、親である、あなた自身の心のケアも大切にして下さい。親が疲弊しきってしまったら、子どものサポートどころではありません。
現在では、専門的な相談機関も多数存在します。
例えば、公的な機関としては、教育支援センターや教育相談センターがあります。こちらでは、子どもに関する相談をすることができます。
また、私的なグループとしては、不登校の子どもを持つ親の会などがさまざまな地域に存在します。
まとめ
以上で、不登校は甘えであると安易に判断して、叱ってはいけない理由やその対処法についてご紹介してきました。
不登校になってしまう原因や理由は、子どもによってそれぞれ違います。
まずは、子どもと寄り添って、ともに時間を過ごしてみて下さい。そうすれば、子どもにとって必要な“何か”が見えてくることがあるはずです。
不登校になったからと言って、人生が終わりということは決してありません。
ぜひ、不登校の解決をきっかけにして、これまで以上に良好な家族関係や関係者全員のより良い人生につなげて下さい!
(参考文献)
・2020年 主婦の友社 菅野純 あらいぴろよ「子どもが学校に行きたくないと行ったら読む本」
・2019年 講談社 下島かほる 「登校しぶり・不登校の子に親ができること」